3月に公開したスタッフ釣行記では、「厳冬期のヒラマサキャスティングゲーム」をご紹介しました。
釣行は2月前半、この時期は年間を通しても30㎏クラスの特大ヒラマサの実績が高い穴場のシーズンです。しかし釣行のタイミングでは冬と春のパターンの狭間の潮となってしまい非常にシビアなタイミングでした。
それでも結果的には15㎏のグッドサイズをキャッチすることに成功。しかしながら、目標であった20㎏オーバーの特大サイズは掛けることができず、次回以降へと持ち越しとなってしまいました。
そして迎えた今回の釣行。
舞台は季節を大きく移し、厳冬から灼熱へ。
真夏の五島列島で「夏マサ」に挑みます。
今回も2月の釣行と同様に、長崎県長崎市より出船の「ステータス」様にお世話になり、リップルフィッシャースタッフの柿下・野田の2名で五島列島へ向かいました。
ヒラマサキャスティングゲームといえば、一般的には春や秋がベストシーズンとされています。
しかし我々は「夏こそ最も熱い」と感じています。
その理由は2つ。
ひとつは、シイラやダツといった大型ベイトを捕食する“超大型ヒラマサ”を狙える確率が格段に上がること。そしてもうひとつは、年間を通しても群を抜いて魚のコンディションが良く、圧倒的なヒラマサのパワーを体感できるからです。
200gに迫るような大型プラグをフルキャストし、極太のPEラインで挑む真っ向勝負は、まさに夏マサならではの醍醐味といえるでしょう。
春の産卵から回復したヒラマサはスレンダーで筋肉質。高水温期も相まって、春の個体とは比べものにならないほどの強烈な引きを見せます。
そんなヒラマサとの出会いを求め、私たちは万全のタックルを準備し、五島列島へ挑みました。
夏のヒラマサキャスティングでは、シイラやダツ、トビウオといった大型ベイトを捕食している場面が多く見られます。そのため、大型プラグの使用頻度が必然的に高まります。
そして、大型プラグで特大のヒラマサを狙う以上、メインラインも太い号数が必須。タックルのパワーバランスを支えるロッド選択が極めて重要となります。
今回の釣行では PE6号タックルも用意しましたが、メインは PE7~10号のタックルを中心に準備しました。
■バランス重視型 タックルセッティング
夏特有のマイクロベイトパターンも想定。
様々な状況の変化にも柔軟に対応できる操作性を重視。
●Ultimo 82ML
14000番クラス Pe6号 + 130lb
使用ルアー:ダイビングペンシル / 180~240mm / 80~140g程度
●Ultimo 83M
14000番クラス Pe6~7号 + 130~150lb
使用ルアー:ダイビングペンシル・ダイビングポッパー / 180~250mm / 80~160g程度
●Aquila MST 85-7+
14000番クラス Pe6号 + 130lb
使用ルアー:ダイビングペンシル / 160~250mm / 60~130g程度
■シイラ・ダツパターン攻略用 タックルセッティング
シイラやダツに合わせた大型ルアーの使用を想定。
シルエットや強波動、着水音による高アピール重視。
特大ヒラマサや、難易度の高いシャローエリアや潮が速い海峡のパワーファイト用。
●Aquila MST 711-8+
18000番クラス Pe8号 + 170lb
使用ルアー:ダイビングペンシル / 200~260mm / 80~160g程度
●Aquila MST 82-9+
18000~20000番クラス Pe8~10号 + 170~220lb
使用ルアー:ダイビングペンシル・ダイビングポッパー / 240~300mm / 140~250g程度
●Ultimo 710MH
18000番クラス Pe8号 + 170lb
使用ルアー:ダイビングペンシル・ダイビングポッパー / 200~260mm / 100~200g程度
初日は潮のタイミングに合わせ、午前7時に長崎市を出航。
最初のポイントは水深50m前後から一気に10m台へ駆け上がる沖の瀬周り。
数日前には29kgの大物が上がり、前日にも複数のブレイクがあったという期待のポイントである。
当初は南風が7mほど吹く予報で、キャスティングゲームには程よい条件かと思われたが、五島列島近海に到着するころには予報に反して風も落ち着き、海は一面のベタ凪状態に。
本来であれば潮波が立つポイントであるが、この日は潮も効いておらず、海面は依然として穏やか。
キャスティングゲームには不利な状況になってしまった。
それでも夏のヒラマサキャスティングゲームは、シイラやダツの群れをヒラマサが追い込み捕食するナブラが発生することも多いため、周囲の状況を警戒しつつ誘い出しを続けた。
そうして、数回船を流し直して反応を探るも、最初のポイントでは柿下にワンバイトあったのみ。
状況を見極めた船長の判断で、早々にポイントを移動することとなった。
次に移動したポイントも沖の瀬周り。
先ほどよりも瀬の規模が大きく、より広範囲を探る展開に。
この頃には少し風も吹き始め、潮流とも同調して、船は1ノット後半から2ノットほどで流れている。
すると1流し目からボイルを確認。
柿下・野田の両名にもバイトがあり、魚の気配は十分。
そして数流し後、野田の操るルアーに突如超特大ヒラマサがバイト!
一発でフッキングに持ち込んだが、直後にスプール内でメインラインが高切れ…。
この間わずか2秒の出来事だった。
トップスピードでフッキングした直後、その勢いを殺すことなく一気に横走りへ移行。
強烈なトルクと瞬発力によりラインがスプールへと瞬時に食い込み、結果としてロックが掛かってしまい、ラインブレイクに至ったと考えられる。
さらにこの時、ヒラマサのボイルがあるものの、捕食されているのはシイラやダツではなく、肉眼では捉えにくい小さいベイトを捕食していたようだった。
そのため、軽量ルアーも扱いやすい Ultimo 83M ・SW14000番・Pe6号のタックルを使用していた。
だが、もし8号以上のヘビータックルを選んでいれば…そう思わずにはいられなかった。
加えて、ドラグ設定はほぼフルロック。魚に合わせた柔軟なやり取りを欠いてしまったのも、悔やまれる要因のひとつだった。
船長の見立てでは魚のサイズはおおよそ30kgクラス。
改めて、超大物が掛かる可能性のあるエリアでは、PE8号タックル以上の重要性を痛感させられる場面であった。
午後に入っても魚からの反応は多く、10バイト近く得られたものの、ルアーの引き速度なのかレンジなのか、いずれもフッキングには至らず苦戦を強いられる状況となった。
その様子を見た船長から「少し潜るタイプのルアーの方がフッキング率が良い」とのアドバイス。
まさにその直後、複数匹のヒラマサがチェイスし、回収間際に1匹がヒット。
サイズこそ大きくはなかったものの、嬉しい1本目を得ることができた。
使用ルアーは 紀夜羅230F(DEEP BLUE OCEAN)。
やはり海面を飛び出さず、水面直下をしっかり泳ぐロングダイブアクションが功を奏した結果である。
▼Tackle Data
Rod:Ultimo 710MH
Reel:SALTIGA 18000HG
Line:ODDPORT #8
Leader:CASTMAN ABSORBER 180lb
Lure:紀夜羅カレントダイバー230F
✔check-シイラ・ダツパターンに有効なルアー選択と引き方
夏のメインベイトとなるシイラやダツを意識した場合、有効なルアー選択と操作のポイントは以下の3点に集約されます。
▼ロングダイブを意識したアクション
▼控えめなルアーアクション
▼水面直下を引けること
この3点を念頭に置いてルアーや引き方を選択すると効果的です。
同じルアーであっても、海域や波の状態、潮の向きなどによって、ロッド操作だけでは狙い通りのアクションを出しにくい場合があります。その際は、板オモリを貼る、フックバランスを変える、リーダーを調整するといった工夫が有効です。
さらに、ロングダイブを多用することが多い場面では、スイベルを使用することで安定性が高まります。スイベルを入れることでわずか1~2gの負荷が加わり、ロングダイブが容易になるうえ、ダイブ中のアクションエラーを軽減する効果も期待できます。
これはあくまでも参考にされて、その日の状況に合わせてルアーやアクションを選び、パターンを見極めてみてください。
夕マズメに入ったポイントでは、船の周囲でダツを捕食するヒラマサのナブラも散見され、雰囲気としては十分。
次々と好ポイントへ導いてくれる船長の期待に応えるためにも、「なんとか一本」と意気込んでいたその時だった。
ミヨシに立ち、Ultimo 710MH を使用して Twister F5 を引いていた柿下のルアーが、突然水中に吸い込まれた。
これは一発でフッキングが決まり、水深も浅かったため一気に浮かせにかかる。
柿下はバラシを防ぐべく慎重にファイトを進めたとのことだったが、魚はグイグイ浮いてきて、あっという間に水面近くへ。
無事にランディングに成功し、柿下もこの日1匹目となるヒラマサをキャッチすることができた。
サイズは12kgと、まずまずのサイズをキャッチ。
▼Tackle Data
Rod:Ultimo 710MH
Reel:STELLA SW 18000HG
Line:ODDPORT #8
Leader:CASTMAN ABSORBER 180lb
Lure:Twister F5
使用していた Ultimo 710MH は、大型プラグを難なく操作できる操作性と、強烈な引きを受け止めるパワーを兼ね備えたモデル。
浅場での一気の浮かしや、突発的な突っ込みに対しても余裕を持った対応が可能で、結果的に初日の1本へとつなげる大きな要因となった。
そして迎えた釣行最終日の2日目。
前日の反省点を活かし、なんとしてでも釣果に結び付けたいところである。
船長から「午前中の上げ潮が勝負」との助言を受け、朝一から全力でキャストを繰り返す。
しかし、前日とは異なりバイトは遠い状況。
この時期の五島海域は、通常であれば水温が20℃後半程度だが、直前に続いた大雨の影響で水温が一気に20℃前半まで低下。
初日にダツのナブラこそ見られたものの、シイラがほとんど姿を見せなかった要因はここにあったのかもしれない。
それでも状況に合わせようと、ルアーチェンジを繰り返しながら粘り強くキャストを続ける。
しかし、時間はあっという間に過ぎ、正午前。
昨日、もっとも反応があったポイントへと入ると、ちょうど地合いに差しかかったのか、1流し目からバイトが。
そしてついに、ミヨシでキャストを続けていた野田にヒット。
使用ロッドは Ultimo 83M
サイズこそ大型ではなかったものの、ヒット直後は夏のヒラマサらしい強烈な引きを見せる。
ベタ凪の影響なのか?小型ベイトパターンへと切り替わっているのか?
直前で見切られているような状況が続いたため、ロングダイブから素早いピッチのショートダイブへとローテーションを試みたことが功を奏し、ついにキャッチへとつながった。
軽量かつ高バランス設計の Ultimo 83M は、こうしたルアーアクションの切り替えにも違和感なく対応できる。パターンを掴みきれないシビアな展開ほど、その真価を発揮するモデルといえる。
この日のようにシビアな状況下でも、確実にバイトへとつなげられる一因となり、思惑通りに仕留めた嬉しい1本となった。
▼Tackle Data
Rod:Ultimo 83M
Reel:STELLA SW 14000XG
Line:ODDPORT #6
Leader:CASTMAN ABSORBER 140lb
Lure:幻影120-220
その後は潮も止まり、残念ながらタイムアップ。
2日目はわずかな時合に1本を得ることができたものの、ヒラマサキャスティングゲームの難しさを改めて体感する結果となった。
野田がキャッチしたのと同じタイミングで、船長はなんと2本のヒラマサをキャッチしており、その日のパターンや魚の活性に合わせたルアー選択・引き方の重要性を強く実感した釣行となった。
今回は大型のキャッチには至らなかったものの、得るものの多い有意義な釣行となった。
夏マサの代表的なパターンといえば、やはり「シイラパターン」
しかし、二日間の釣行でシイラを目撃できたのは、たった一度きり。
たまにダツを追い回すヒラマサのボイルは何とか数回は見られたが、今回目撃できたヒラマサのボイルのベイトは一体何だったのか、我々も船長でさえも最後まで掴むことができなかった。
それでも、改めて「夏マサの奥深さ」と「面白さ」を痛感させられる釣行となったのは間違いない。
夏のヒラマサキャスティングは、潮やベイトの影響を最も強く受ける時期。
今回も例外なく、極めて難しい状況に直面したが、それこそが夏マサの醍醐味であり、一瞬にして全てを覆す爆発力を秘めている。
厳しい暑さの中でのゲームゆえ、こまめな水分補給は必須。だがその先には、他のどんなターゲットにも代えがたい圧倒的なドラマが待っている。
だからこそ、この奥深くゲーム性に富んだ「夏マサキャスティング」に、ぜひ多くのアングラーに挑戦してもらいたい。